E-TOMO Tasting Navi No.4
カベルネ・ソーヴィニヨン Cabernet Sauvignon
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E-TOMO Tasting Navi 第4回は、世界で最も知られる高貴な黒ブドウ品種であり、そのブドウから数々の偉大な赤ワインが生み出される「ワインの王」カベルネ・ソーヴィニヨンをご紹介! カベルネ・ソーヴィニヨンとは、どんなワインなのでしょうか?
起源
カベルネ・ソーヴィニヨンの起源は、長いあいだ明確に理解されておらず、最近まで、このブドウの起源は古く、古代ローマのワイン造りに使われ、プリニウスが言及したビトゥリカ(Biturica)というブドウではないかと推測。18世紀には、このブドウはプチ・ヴィデュール(Petit Vidure)やビデュール(Bidure)とも呼ばれ、ボルドー地方メドック地区では、人気の栽培品種だったとされています。
ところが1997年、カリフォルニア大学デービス校のブドウ栽培醸造学部にて、キャロル・メレディス博士率いるチームがDNA鑑定を行い、カベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの子孫であり、17世紀にフランス南西部のボルドー地方周辺で起こった偶然の交配である可能性が高いことが判明。この発見以前は、ブドウの名前が似ていることや、カベルネ・ソーヴィニヨンがカシスやインクの香り、ソーヴィニヨン・ブランの草の香りなど、両ブドウと似たアロマを持っていることから、この起源が疑われていたとのこと。
特徴
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■ブドウ
世界で最も人気のある赤ワイン用ブドウで、最も広く植えられているブドウのひとつ。芽吹きも収穫も遅い晩熟品種で、黒く青い小粒で果皮が厚く、葉は深い5裂。凝縮した風味と、皮と種由来の渋みで、非常に飲みごたえのあるフルボディワインが造られます。
幅広い土壌に適合し、他の品種ほど土壌の特徴をワインに反映させないブドウで、病害にも強く誰でも育てやすい反面、産地や気候によって大きく味が変化するのも、この品種の特徴。完熟するにはかなりの気温と日照を必要とするため、寒冷地では栽培されません。
■香り
世界中の多様なテロワールで栽培されているため、様々な風味を持つ。基本的にはブルーベリーやブラックカラント(黒スグリ)、カシス、ダークチェリーなど黒系果実の香りに、黒胡椒やクローブ、タバコなど香ばしい風味。
収穫時のブドウの熟度に大きく影響されるため、冷涼産地や未熟なブドウには、ピーマンやミント、杉のような清涼感あるフレーバーが伴う。過熟になると「ジャミー」な果実を煮詰めたジャムのような香りに。
ボルドーワインは、ミネラル香としてグラファイト(鉛筆の芯や黒鉛)、オーストラリアワインは、現地特有のユーカリ香が感じられることも。
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■スタイル
カベルネ・ソーヴィニヨンワインは、大きく2つのスタイルに分けることができます。
旧世界 Old World
ボルドーに代表される旧世界のカベルネ・ソーヴィニヨンは、同じボルドー種であるカベルネ・フランやメルローなど複数の品種をブレンドすることが多く、カベルネ・ソーヴィニヨン単一で造られることは珍しい。果実味よりも、スミレなどの花やハーブ、土の香りとともに、甘草やタバコ、黒鉛の香りなど、奥行きのある複雑なアロマが感じられる。ボルドーワインは、フルボディながら繊細さを兼ね備え、味は少し軽めながら、強いタンニンと酸が舌に残る。
新世界 New World
アメリカ、オーストラリア、チリなどの新世界では、カベルネ・ソーヴィニヨン単一で醸造されることが多く、黒みを帯びた濃い色調で凝縮感があり、ブラックチェリー、リコリス、ブラックペッパーのフレーバーに、樽由来のビターチョコレートやバニラ香などの甘苦味が感じられる。タンニンと酸味はやや少ない傾向にあり、アルコール度数は13.5~15.5%と高め。一般的にはボルドーワインより早飲みできるが、カリフォルニアのカルトワインのように、高級なワインの中には、20~30年の長期熟成に耐え得るものも。
代表的な産地
フランス
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■ボルドー地方
カベルネ・ソーヴィニヨンの原産地、ボルドー地方。最も風味豊かで熟成に適したカベルネ・ソーヴィニヨンが造られ、高級赤ワインの代名詞的存在。
温暖な気候と水はけのよい砂利質の土壌を好むことから、ボルドーではメドック地区やグラーヴ地区で多く栽培。晩熟型で、気候によって品質が左右されるため、栽培リスクの
軽減と品質維持、味の調整を目的として、ボルドーでは伝統的にアッサンブラージュすることで上質なワインを生み出しています。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、ボルドー地方以外にも、ラングドック・ルーション地方や南西地方でも栽培。単一品種・複数品種のブレンド共に造られており、凝縮した果実味の高品質でリーズナブルな価格帯のものが多い。
アメリカ
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■カリフォルニア州
ノースコーストAVAには、ナパ・ヴァレー、ソノマ・カウンティを筆頭に、優れたカベルネ・ソーヴィニヨンを生産する地域が多く点在。ナパ・ヴァレーでは単一品種で醸造されることが多く、カシスやブラックベリーなど凝縮度の高い果実香にスパイシーな香り、アメリカンオークからくる甘みを感じるものが多い。長期熟成に向くプレミアムワインも造られている。
カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンを一躍有名にしたのが、1976年にパリで開催された、フランス産とカリフォルニア産ワインのブラインドテイスティング。当時無名だったナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンが、なんとボルドー1級ワインを抑え、見事1位を獲得。この試飲会は後に「パリスの審判」と呼ばれ、フランス以外でも高品質ワインが造られることを世界中に知らしめるきっかけに。
チリ
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世界でも高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンの生産国として知られるチリ。
温暖で乾燥した気候は、カベルネ・ソーヴィニヨンにとって天国ともいえる絶好の環境! 全体の30%を占めるチリ最大の栽培面積を誇り、シンプルでフルーティなお手頃ワインからフルボディの高級ワインまで、多様なスタイルのワインが生産。その品質の高さと手軽さで、日本でも「チリカベ」の愛称で親しまれています。熟した黒系果実の香りや風味、ミントを思わせるハーブのような清涼感溢れるニュアンスが特徴。
■マイポ・ヴァレー
カベルネ・ソーヴィニヨンの主産地。太平洋の涼しい風と内陸の暑いアンデス山脈の間に位置する、最も理想的な地中海性気候。カシス、ブラックチェリー、イチジクペースト、ベーキングスパイスなどの香りを持ち、ナパ・ヴァレーと同様に高く評価。中でも、マイポ川北岸のプエント・アルトからチリを代表する赤ワインが生産。
オーストラリア
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■南オーストラリア州
オーストラリア産カベルネ・ソーヴィニヨンは、1970年代に南オーストラリア州クナワラ地方でブレイク。ボルドーに近い温暖な気候と、酸化鉄を多く含む赤土の土壌「テラロッサ」が、快活なスタイルの優れたカベルネ・ソーヴィニヨンを生み出しています。同じ南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーでは、重厚感のある味わいのワインを生産。
オーストラリアは、通年温暖である海洋性気候で、特に夏は乾燥して適度に涼しいことからブドウをじっくりと完熟させることが可能。他にも、西オーストラリア州マーガレット・リヴァーでは、黒系果実の風味が強く、より引き締まったスタイルのワイン、ヴィクトリア州のヤラ・ヴァレーでは、エレガントなスタイルなど、様々な産地で特徴的なワインが造られています。オーストラリアでは、カベルネ・ソーヴィニヨンも、スクリューキャップでボトリングされるのが一般的。
南アフリカ
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1994年のアパルトヘイト撤廃後、南アフリカのワイン産業は、カベルネ・ソーヴィニヨンを主力のブドウとして推進、今や南アフリカで最も広く栽培されている赤ワイン用ブドウに。カベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインを中心に、ボルドースタイルのブレンドワインや、シラーズとブレンドするオーストラリア式のワインも造られ、旧世界のエレガンスと新世界の果実味を備えるとして、世界のワイン評論家やソムリエから熱い注目を集めている産地。ステレンボッシュは、重くフルボディのワインとして知られ、コンスタンシアではハーブやミントのような香りが特徴。
環境と人に配慮したワイン造りが行われていることでも知られる南アフリカ。2010年ヴィンテージからは、世界で初めてサステイナビリティ(持続可能性)を保証するシールを採用しています。
その他
カベルネ・ソーヴィニヨンは、ほぼすべての主要なワイン産出国で生産されており、イタリア、スペイン、アメリカ ワシントン州、アルゼンチンなどの他、カナダのオカナガン・ヴァレーのような冷涼地から、レバノンのベッカー高原のような温暖な土地に至るまで広く栽培。
フードペアリング
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■旧世界のボルドースタイルワインには・・・
豊かな果実味と酸、渋みに加え、スモーキーさと複雑な味わいが特徴のボルドーワイン。どっしりとしたフルボディには、やはり肉料理がベストペアリング! カベルネ・ソーヴィニヨン特有の渋みを肉の脂がまろやかにし、肉のこってりした脂を赤ワインのタンニンが流してくれる相関関係にあり、牛肉やラム肉のグリル、ローストビーフの他、マッシュルームを使ったビーフストロガノフや、カジュアルなベーコンチーズバーガーともよく合います♪
■新世界のカリフォルニアスタイルワインには・・・
熟した黒系果実に、シナモンやナツメグなどのスパイス、チョコレートなどの香ばしさが感じられ、渋みはまろやか。フルボディながら、どこかやさしい印象の新世界ワインは、甘みのあるソースを使ったグリルや、味付けのしっかりした中華料理、香辛料たっぷりのエスニック料理も、ワインの果実感が辛さを中和してくれて好相性!
★ポイント★
フルボディが主体のカベルネ・ソーヴィニヨンは、ワインのアロマに着目、「同調」させるのがベアリングのコツ。
同じ牛肉やラム肉のグリルでも、若くて青さの感じるワインには、ハーブやいんげんなどをサイドに添えて。凝縮した果実味のあるワインには、BBQソースやマデイラソースなど濃厚なソースでバランスを取って。熟成感のあるワインは、キノコやマッシュルームを合わせると、ペアリングが格段にアップします♪
ワインテイスティング
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レ・ザレ・ド・カントメルル
Les Allees de Cantemerle Haut-Medoc 2018
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メドック格付け5級のシャトー・カントメルルが造るセカンドワインで、主にシャトーの若木から造られます。カントメルルといえば、かつて5級シャトーの中でも末席に位置づけられていましたが、今では常に格付け以上の実力を発揮する優良シャトーと評されています。
ボルドーでは、カベルネ主体でメルローやカベルネ・フランなどとブレンドされるワインが多い中、今回試飲したこちらは、カベルネ・ソーヴィニヨン100%! オーク樽で約12カ月熟成させ、落ち着いたタンニン、高めの酸で、バランスの取れた味わいです。
産 地:フランス ボルドー地方 オー・メドック
品 種:カベルネ・ソーヴィニョン100%
醸 造: オーク樽熟成 約12カ月
Alc.度:13%
参考小売価格:3,500円
Importer:モトックス
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haruna:
今回テイスティングしたカベルネの中で、唯一の旧世界ワイン。圧倒的に違うのは、果実感が控えめな点です。フランスのカベルネはエレガントでクラシック、上品といった表現がぴったり。落ち着いた味わい、比較的アルコールは低めと感じ取ったら、フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンだと予想してみてください!
ロバート・モンダヴィ プライべートセレクション カベルネ・ソーヴィニヨン
Robert Mondavi Private Selection Cabernet Sauvignon 2021
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“カリフォルニアワインの父” と称されるロバート・モンダヴィ氏。「世界最高峰のナパ・ヴァレーワインを造る」というビジョンのもと、1966年に同名のワイナリーを設立。
大学で経済と経営を専攻したロバートは、そこで得たワイン産業におけるマーケティングの重要性に関する知見を活かし、家族経営事業を発展。ヨーロッパの高級ワインに用いられるオークの小樽熟成を自分のワイン造りに取り入れるなど、ヨーロッパの伝統的なワイン造りとアメリカのテクノロジーやマーケティングを融合させた技法で、カリフォルニアを代表するワイン生産者に。
プライベート・セレクションは、大切な人とのプライベートな時間を豊かに過ごすことをコンセプトとしたブランド。冷涼産地特有の、爽やかな酸味によるエレガントで繊細な味わいが特徴です。
産 地:アメリカ カリフォルニア州
品 種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
Alc.度:13.5%
参考小売価格:2,890円
Importer:メルシャン
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ミズナ:
針葉樹やメントールのような爽やかな香りの中に、オーク樽熟成によるバニラの香りが心地よく感じられ、フランスなど旧世界ワインとの大きな違いが感じられます。甘く力強い果実味からは、太陽光をたっぷり浴びて熟したブドウを使用していることが推測され、ソフトなタンニンと長い余韻で、全体的にエレガントな味わい。中華料理など味の濃い料理と合わせても、ワインの味がかき消されることなくマリアージュを楽しめそうです!
モンテス アルファ カベルネ・ソーヴィニヨン
Montes Alpha Cabernet Sauvignon 2020
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チリワインの確固たる地位を築いたモンテス社が、世界に誇るプレミアムワイン。チリといえば安価で美味しいワインが多い中、モンテスは1988年に、それまでのチリワインでは考えられない高価格帯の「モンテス アルファシリーズ」をリリース。ブドウが栽培されるのは、チリの中でも特にカベルネ・ソーヴィニヨンに適していると言われるコルチャグア・ヴァレー。海からの潮風の恩恵を受けて、昼夜の寒暖差が大きく、質の良いブドウが収穫できるのが特徴の地域です。
ニューワールドのため、第1アロマは熟したプラムやブラックベリーといった果実がしっかり感じられ、タンニン多め、キノコやハーブ、土っぽさも感じ取れる味わい。凝縮した果実味と骨格を備えた力強いカベルネ・ソーヴィニヨンです。サクラアワード2023にてゴールド受賞!
産 地:チリ DO.コルチャグア・ヴァレー
品 種:カベルネ・ソーヴィニヨン90%、メルロ10%
醸 造:フレンチオークで約12ヵ月間熟成
Alc.度:14.5%
参考小売価格:2,300円
Importer:エノテカ
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haruna:
アルコールの高さとタンニンの収斂性のインパクトが強いワイン! 他のニューワールドのカベルネと比べると土っぽさやハーブのような感じがあり、「野性的」なイメージが強い印象でした。ラム肉などのジビエ系のお肉料理との相性がぴったりなはず♪ 500円くらいでも飲めるチリワインも多い中、このモンテス アルファはチリ産のトップクラスのワインです。
ベンフォールズ マックス カベルネ・ソーヴィニョン
Penfolds MAX’S Cabernet Sauvignon South Australia 2019
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世界最高峰のワイナリーの1つであるペンフォールズ。もともとは医療用の酒精強化ワインを造っており、1950年代にスティルワインに転向した後、創設より長い年月を経て、世界に認められる「ニューワールドワイン」を造るワイナリーに。ワイン&スピリッツ誌の「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を歴代最多の28回受賞するなど、多数の受賞歴を誇ります。
産 地:オーストラリア 南オーストリア州
品 種:カベルネ・ソーヴィニョン100%
Alc.度:14.5%
参考小売価格:3,850円
Importer:日本リカー
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ユメコ:
こちらの特徴は何といってもピーマンのような青い香り。オーストラリアの特徴であるユーカリの香りも感じる、清涼感にあふれたワインです。他の新世界ワインに比べて、フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンに似ており、全体的にバランスのいい1本です。E-TOMOではこちらが一番人気という結果に!
KWV カセドラル・セラー カベルネ・ソーヴィニヨン
KWV Cathedral Cellar Cabernet Sauvignon 2019
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KWVは南アフリカのワインの繁栄と歴史を語るうえで外せないワイナリー。主な輸出先は、イギリス、オランダ、フランス、ドイツ、ベルギー、カナダ、アメリカ、日本など、30以上の国々。
近年は最新技術が続々と導入され、品質が目覚ましく向上。今回のワインは、2022年にサクラアワードも受賞しています。
産 地:南アフリカ ウェスタン・ケープ州
品 種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
Alc.度:14%
参考小売価格:2,500円
Importer:国分
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ユメコ:
フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンに比べ、香辛料の香りが強いのが特徴的。タンニンが多めで、収斂性を強く感じ、余韻が長く、果実の香りもしっかりと味わうことができます。カベルネ・ソーヴィニヨン100%とは思えない複雑味があり、赤身のステーキ等、肉の旨みを感じる料理とのペアリングがばっちりです。
今回のポイント
色調の違い
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・温暖な地域でブドウが熟すと、色が濃くなる
・若いワインは紫の色調が強い
・熟成が進むと、徐々に赤みを帯び、色も淡くなる
・熟成具合はワインのエッジの色を見ると分かりやすい
(グラスを傾けて液面のグラスに当たる縁を見る)
外観はほぼ同じで、輝きのある濃いダークチェリーレッド。
非常に僅差ながら、外観からヴィンテージの予想は可能。
■フランス:やや赤みがかっていた ⇒ 2018年
■アメリカ:最も紫が強かった ⇒ 2021年
香り&味わいの違い
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強弱はあるものの、黒スグリと杉は、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴香。
果実感の強さで、旧世界か新世界かをある程度予測してみましょう。
・旧世界は、果実味・酸・タンニンのバランスが三拍子揃い、複雑味もある
・新世界は、太陽光をたっぷり浴びた圧倒的な果実味がある
・新世界でも冷涼産地のワインは、酸もしっかり感じられる
・ピーマン香は、冷涼産地かブドウが未熟な可能性高し!
■フランス:ややピラジン+上品でエレガントな味わいはさすがボルドー
■アメリカ:香り味わい共にフルーツ中心+木樽のバニラ香は確実に新世界
■チリ:ハーブや土っぽいアーシーで野性的な香りが印象的
■オーストラリア:ボルドーに近い味わい。ユーカリの清涼感が香りにも味わいにも有り
■南アフリカ:黒スグリにタバコのようなスモーキーな香りが特徴的
★ピーマン香について★
カベルネ・ソーヴィニヨンに見られる香りに「ピーマン香」があります。
これは「メトキシピラジン(Methoxypyrazines)」と呼ばれる有機化合物群に起因し、未熟なカベルネ・ソーヴィニヨンのブドウに多く含まれる成分。「ピラジン」「メトキシ」「IBMP」とも呼ばれ、含有量が多いと、カベルネ・ソーヴィニヨンの味を植物的で “青臭い” ものにし、その味わいに好き嫌いがあるため、時にボルドーワインに含まれるネガティブな「グリーン」成分と考えられています。
実はこの「ピーマン香」、ブドウの木の葉の部分が過剰に成長することで、ワインの植物的なアロマの増加に直結するという研究結果が得られています。また、ブドウが完熟することで、知覚できないレベルまで減少することも分かったため、ブドウ栽培者は、カベルネ・ソーヴィニヨンのブドウ畑の生育状況を管理する戦略を立て、収穫をできるだけ遅らせて果実が完全に熟すのを持つだけでなく、果粒の色づき始めた頃を見計らい、ブドウの房の周囲にある葉を切り落とし、房に日光を直接当てるようにするなど、様々な工夫と対策がなされています。
ピラジンは、カベルネ・ソーヴィニヨンのみならず、同じボルドー品種であるカベルネ・フランやメルロー、カルメネールにも多く含まれており、メルローに関しては、ボルドーワインよりも日本ワインに顕著に感じられる成分。ピーマン自体、好き嫌いの分かれる野菜代表のため、ワインに関しては、マイナス要因に捉えられることがほとんど。しかし、ブラインドテイスティングにおいては、品種当ての大きなヒントとなる香りでもあるので、ピラジンが感じられないと、試験対策的には困る! という声もあるのです(笑)
ピーマン嫌いな人は、カベルネ・ソーヴィニヨンはすぐ分かる! という話を聞いたこともあるので、カベルネ・ソーヴィニヨンかも? と思った時には、果実香の奥底に隠れている「ピーマン香」をぜひ探してみてください。
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