E-TOMO Tasting Navi No.1

2022年05月11日

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ソーヴィニヨン・ブラン Sauvignon Blanc

E-TOMO Tasting Navi 第1回は、新緑の季節にぴったりの爽やかな白ワイン、ソーヴィニヨン・ブランをご紹介! ソーヴィニヨン・ブランとは、どんなワインなのでしょうか?

起源

かつてはフランス・ボルドー地方原産の白ブドウとされてきたのが、現在ではロワール地方を原産地とする説が有力。DNA鑑定の結果、サヴァニャン(Savagnin)と出自不明のブドウとの子供であると判明。名前の由来は、Savagninの語源であるフランス語の「sauvage(野生の)」と「blanc(白)」から “Sauvignon Blanc” に。

ちなみに、サヴァニャンの親はピノ・ノワールであり、ソーヴィニヨン・ブランの子供がカベルネ・ソーヴィニヨン。すなわち、ピノ・ノワール ➭ サヴァニャン ➭ ソーヴィニヨン・ブラン ➭ カベルネ・ソーヴィニヨンという家系図が成り立つのです♪

特徴

■ブドウ
葉は小さめで明るい緑色、ブドウの粒は小さめで果皮が薄く、完熟すると緑色から濃い黄金色に。樹勢が強く、比較的晩熟。

■香り
爽やかな柑橘に、青草やハーブの香りが特徴的なアロマティック品種。
ライム、グレープフルーツ、グースベリー、ハニーデューメロン、青草、ハーブ、根セロリ、カシスの芽、アスパラガス、スイカズラ、火打石、猫のおしっこなど。温暖な地域では、パッションフルーツの香りも。特徴香である “青い“ 香りは、ピーマン香として知られるメトキシピラジンに由来。


■スタイル
ソーヴィニヨン・ブランの豊富な酸と特徴的なアロマを生かすため、嫌気的な醸造方法で造られることが多い。ステンレスタンクにて発酵・熟成が行われ、フレッシュでジューシーな味わいを強調したスタイルは、特に冷涼な産地に多く見られます。このスタイルで造られたワインは長期熟成には向かず、若いうちに飲んで楽しめるという点で、今飲みが主流である現代の消費者の嗜好にマッチしているともいえるでしょう。

逆に、温暖な地域や上級品には、木樽での醸造や、セミヨンなど別品種とブレンドすることによって、複雑性とリッチな味わいを持ち合わせたスタイルで造られることも。

代表的な産地

フランス

■ロワール地方 Val de Loire
サンセール(Sancerre)とプイィ・フュメ(Pouilly-Fume)が2大名産地。ロワール川を挟んで、サンセールは西側、プイィ・フュメは東側に畑が広がり、ともにシャープな酸とミネラル感のあるみずみずしい味わいが特徴。フレッシュでクリスプなワインが造られています。

ロワール川上流地域には、多様な土壌が存在。代表的なのが、テール・ブランシュ(シャブリと同じミネラル豊富な粘土石灰質=キンメリジャン)、カイヨット(小石を多く含む石灰質)、シレックス(火打ち石を含む粘土石灰質)。土壌によって味わいの傾向も異なり、特にプイィ・フュメでは、火打ち石のようなスモーキーなニュアンスがあることから「フュメ」(フランス語で “煙” )の名が付いたといわれています。

■ボルドー地方 Bordeaux
グラーヴ(Graves)とアントル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)が主産地。セミヨンとブレンドされることが多く、樽発酵・樽熟成で仕込まれたものは、しっかりとしたストラクチャーと厚みのあるワインに。柑橘よりも白桃などの核果、スイカズラやエルダーフラワーなどの華やかな香りと、リッチな味わいが特徴。

ボルドーといえば赤ワインのイメージですが、海洋性気候でミネラルが豊富なボルドーの土壌は、白ワイン品種の栽培にも好適。ソーヴィニヨン・ブランは、実は赤ワインよりも長い歴史を持ち、ボルドー・ブランの愛称で、秀逸な辛口白ワインも多く造られています。

ソーテルヌ(Sauternes)やバルザック(Barsac)で造られる濃厚な甘口貴腐ワインにおいても、ソーヴィニヨン・ブランは主要品種の1つ。フレッシュなワインのイメージからすると意外ですが、ソーヴィニヨン・ブランの豊富な酸が長期熟成を可能にしているのです。


ニュージーランド

■マールボロ Marlborough
栽培されているブドウの70%以上をソーヴィニヨン・ブランが占めるニュージーランド。中でも南島の北端、マールボロは、国全体の75%以上が栽培される「ソーヴィニヨン・ブランの聖地」。

1985年以降、パッションフルーツを思わせる強い果実味に、清涼感溢れるカットグラス(青草)やハーブのようなアロマが調和する特徴的なスタイルは、世界でも高く評価され、ニュージーランドのワイン産業は大きく発展。その立役者が「マールボロ・ソーヴィニヨン・ブラン」の代名詞ともいえる、クラウディ・ベイ(Cloudy Bay)。

近年では、似たスタイルで安価なものが南アフリカやチリで生産されるようになり、差別化を図りたい生産者は、よりフルーツの熟度を重視、過度な青草やハーブの香りは敬遠されるようになっています。

チリ

栽培面積ではシャルドネを上回り、白ブドウでトップのソーヴィニヨン・ブラン。かつてソーヴィニヨン・ヴェール(Sauvignon Vert=Sauvignonasse)と混同されていた時代があったため、1990年代初頭までは、ラベルに「ソーヴィニヨン」とだけ表示されていたことも。

暖かい気温と恵まれた日照のおかげで、トロピカルな南国フルーツの香りが感じられるのが特徴。ニュージーランドよりも酸は控えめ、まろやかな口当たりはフランス・ボルドーに近いスタイル。近年では、冷涼産地で栽培する生産者が増え、グレープフルーツや野菜香のするものも多く造られるように。

チリ随一のソーヴィニヨン・ブラン銘醸地と称されるレイダ・ヴァレー(Leyda Valley)や、サン・アントニオ・ヴァレー(San Antonio Valley)、カサブランカ・ヴァレー(Casablanca Valley)では、冷涼な気候を生かした爽やかな味わいの高品質なワインが造られています。

その他

南アフリカ、オーストラリア、カナダ、アメリカのワシントン州やカリフォルニア州で広く栽培。ニューワールドのソーヴィニヨン・ブランは、フルーティーで芳醇な味わいのものが多く、アメリカでは「フュメ・ブラン(Fume Blanc)」とも呼ばれています。

フードペアリング

■若々しくフレッシュでライトなワインには・・・
サラダ全般、カルパッチョ、シンプルに調理した白身魚や甲殻類、天ぷら、ベトナム料理など

■木樽を使ったリッチなワインには・・・
グリルまたはスモークした魚介、サーモン、アスパラのリゾット、フィッシュケーキ、カニの詰め物など

★ポイント★
シャープな酸とグリーンノートで爽やかさをプラスしたい料理にオススメ。
特徴香であるグレープフルーツや、ミント、ディル、ローズマリーなどのハーブをブリッジ食材(料理とワインの橋渡し)にすると◎。ただし、時に料理の “苦味“ を強調する場合もあるので注意。

ワインテイスティング


パスカル・ジョリヴェ サンセール 
Pascal Jolivet Sancerre 2020

ロワール屈指の優良生産者であり、自然派の造り手としても有名なパスカル・ジョリヴェ。農薬を一切使用せず、手摘みでの収穫、グラヴィティシステムの採用、天然酵母の使用など、「できるだけ自然に、手を加えないこと」をコンセプトに、ソーヴィニヨン・ブランという単一品種でテロワールの個性を表現。その手腕から “ソーヴィニヨン・ブランの魔術師” と称されています。

スタンダード・キュヴェであるこちらは、柑橘類やスイカズラ、火打石を思わせるフルーティーでミネラリーなアロマと、爽やかで溌溂とした酸味が感じられ、体にすっとなじむ心地よい味わいは、繊細な和食との相性も抜群です。

産 地:フランス ロワール地方 AOCサンセール
品 種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
醸 造:ステンレスタンク発酵・熟成(3~6カ月)
Alc.度:13.5%
参考小売価格:3,800円
Importer:エノテカ

みゆう:
ソーヴィニヨン・ブランの最大の特徴である草のような香りがしっかりと感じられますが、ニュージーランドほど香りは強くなく、上品な印象。柑橘系と青草の香り、若々しく爽やかで溌溂とした酸味を感じ取ってコメントできれば、試験でも合格点が取れると思います◎



ボートシェッド・ベイ マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン
Boatshed Bay Marlborough Sauvignon Blanc 2021

ニュージーランドワインの名門「ヴィラ・マリア」を世界的ブランドに押し上げた、醸造家でありマスター・オブ・ワインの称号を持つアラステア・メイリング氏が手掛けるボートシェッド・ベイ。

マールボロの2つのサブリージョン、沿岸部で冷涼なアワテレ・ヴァレー(Awatere Valley)の鮮度の高いブドウと、比較的温暖でボディの強いワイラウ・ヴァレー(Wairau Valley)のブドウを早朝に収穫、別々に醸造してブレンド。
サスティナブル農法も実践、自然環境の保護にも積極的に取り組み、バリュー価格のエントリーラインながら、妥協を許さない丁寧な造りが味わいにも表れています。

産 地:ニュージーランド 南島 マールボロ
品 種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
醸 造:ステンレスタンク発酵・熟成(2ヵ月)
Alc.度:13.0%
参考小売価格:1,600円
Importer:モトックス

ミク:
輝きのある透き通った外観で、色調はグリーンがかったレモンイエロー。グレープフルーツやパッションフルーツの華やかな香りに、石灰のミネラル感と柑橘系のフレッシュさ、草木のような自然の香りを感じることができます。やや軽めのアタックと溌溂とした酸味が特徴的! 小ぶりか中庸のグラスを使うとより楽しめます♪



ラポストール グランド・セレクション ソーヴィニヨン・ブラン
Lapostolle Grand Selection Sauvignon Blanc 2020

チリの名門・ラポストールは、グラン・マルニエ創業者のひ孫が1994年に創設したワイナリー。チリのテロワールをありのままに表現するため、徹底したワイン造りを行っています。火山性で養分の少ないチリの土壌で、丁寧なキャノピーマネジメントと灌漑によって生育をコントロール。オーガニック農法の認証「Ceres」、ビオディナミ農法の認証「Demeter」も取得。

やや淡いレモンイエローの外観に、凝縮感のある白桃や黄桃、シトラス系の香り。爽やかな印象のワインながらまろやかさもあり、伸びやかな酸味も備えたバランスのよいワイン。

産 地:チリ セントラル・ヴァレー/ラペル・ヴァレー
品 種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
醸 造:ステンレスタンク発酵・熟成(4週間)
Alc.度:13.5%
参考小売価格:2,150円
Importer:ファインズ

ユメコ:
チリという温暖な気候で造られたからこその華やかな香りが広がり、まろやかで厚みを感じるワイン。これぞソーヴィニヨン・ブラン! といった特徴が控えめなので、ブラインドテイスティングでは上級者向きかも? 「ソーヴィニヨン・ブランの青っぽさが苦手」という人や、ボルドーブランが好きな人にオススメです♪

今回のポイント

色調の違い

■左:ロワール、フランス
■中:ニュージーランド
■右:チリ

・NZ産は色が淡く、グリーンの色調が強いことが多い
・温暖な地域であるほどブドウがよく熟し、イエローの色味が強くなる
・醸造において、果皮との接触、熟成期間が長いほど、色は濃くなる
・空気に触れない嫌気的醸造=ステンレスタンクはフレッシュで淡い色調に(好気的醸造=木樽は、酸化熟成が早まり色調も濃くなる)

香り&味わいの違い

レモングラス

強弱はあるものの、共通して感じられるのは、レモングラスなどのハーブや、草を刈った時のような「グリーン」な香りと、シャープな酸味。冷涼な地域であるほど、グリーンの印象が強くなる傾向に。
フレッシュで爽やかな特徴を生かすため、ステンレスタンク発酵が主流、樽を使用しているものは少ない。(※ボルドー・ブランを除く)

■ロワール:火打石のようなスモーキーな香りやミネラル感が現れる
■ニュージーランド:強いパッションフルーツの香りがしたらNZ!
■チリ:トロピカルな香りがありながら酸はNZより控えめで穏やか


★テイスティングのコツ★

テイスティンググラス
テイスティングに使うグラスは、各種認定試験にも使われている「ISO国際規格テイスティンググラス」を用意するのがオススメ。香りを取りやすいデザインに造られており、受験生にとっては、より本番に近い環境でのトレーニングが可能に。
家で軽くワインを飲む時にも使えるので、6脚セットで揃えておくとよいでしょう。