E-TOMO 繁昌Navi No.52

2023年11月15日

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E-TOMO繁昌Navi No.52

こんにちは! E-TOMOです。

11月に入っても季節はずれの暑さが続き、東京では先週、27.5℃の夏日を記録! 100年ぶりに11月の最高気温を更新しました。朝晩と日中の気温差に、体調など崩さぬよう、しっかり気をつけたいですね。

そんな今ひとつ秋気分になりきれなかった11月初旬でしたが、ワインは秋真っ盛り!「新酒」の季節です。
新酒についての過去記事は こちら

11月3日には「山梨ヌーボー」が解禁。
日本が誇る2大固有品種「甲州」と「マスカットベーリーA」の新酒が解禁されましたが、皆様はもう飲まれましたか?
出来たてほやほやのフレッシュな新酒は、秋の味覚にもぴったりですよ♪

さて、新酒といえば、E-TOMOの大人気シリーズ『E-TOMO定点観測』。
2023年はワイン造りを追いかけ、前回は、たわわに実ったブドウの収穫をレポートしました。

これまでの記事はこちら:
『E-TOMO定点観測 ~ワインができるまで~』①芽かき
『E-TOMO定点観測 ~ワインができるまで~』②傘かけ
『E-TOMO定点観測 ~ワインができるまで~』③収穫

白百合醸造の全面協力を得て、約6カ月に及んだ取材も、今回が最終回。
発芽から成長を見守ってきたブドウたちが、いよいよワインに生まれ変わります!

最終回の第4回は、「ワイン造り」です♪

『E-TOMO定点観測 ~ワインができるまで~』No.4

定点観測 ④ ワイン造り

山梨県甲州市勝沼町の白百合醸造へ、ブドウの収穫で訪れたのは、9月後半。
ワインは、収穫と仕込みがほぼ並行して行われるため、ワイン造りについても、同じタイミングでの取材となりました。

ワイナリーの入口左手には、かつて醸造に使われた木樽や道具が

こちらが、自社畑にてマスカットベーリーAを収穫している様子。

クオリティーの高いブドウが、たくさん収穫できました!

収穫されたブドウは、トラックでワイナリーへ運ばれ、1~3日冷蔵されてから、仕込みが行われます。
暑い中収穫されたブドウは、一旦冷やしてから仕込んだ方がよい、というのは、前回お伝えしましたね。

いよいよ、待ちに待ったワイン造り!
この美しいブドウたちは、どのようにしてワインになるのでしょうか?

今回は「マスカットベーリーAが赤ワインになるまで」をレポートします♪

ワインの造り方

まずは、ワインの造り方について。大まかに以下のような流れで造られます。

©白百合醸造

白ワインと赤ワインでは、プレス(圧搾)と発酵の順序が異なるのがポイント。

白ワイン:圧搾した後、果汁のみを発酵
赤ワイン:皮の色素を抽出するため、ブドウを皮ごと発酵した後、圧搾

白百合醸造のワイナリー壁面には、醸造工程を示した『ワインのできるまで』が飾られていました。
赤ワイン、白ワイン、ブランデー、ぶどう果汁の違いがよく分かりますので、ぜひご覧ください。

©白百合醸造

なお、4年前の収穫体験レポートでも、ワイン造りについて簡単にご紹介しています。
E-TOMO繁昌Navi No.12「白百合醸造L’ORIENT『収穫体験』レポート」

赤ワインができるまで

取材2日目11:30am。前日に収穫した自社畑のマスカットベーリーAを急遽仕込むとの一報が入り、現場に急行したE-TOMO取材班。
この手で収穫したブドウの仕込みが見られるとは! ワクワクしながら撮影に臨みました。

除梗・破砕

「除梗・破砕」とは、ブドウの梗を取り除き、果粒を軽く潰す作業。
収穫し、選果を終えたブドウが運び込まれ、除梗破砕機にて果梗が取り除かれます。

といっても、必ずしもすべての赤ワインが除梗されているとは限りません。
「全房発酵」といい、造り手やワインのスタイルによって、敢えて除梗せずに梗のタンニンを抽出することで、ワインに複雑味やストラクチャーを与える製法もあることを、知っておく必要があります。

こちらが除梗破砕機。バスケットに入ったブドウをベルトコンベアに乗せて、上から投入していきます。

E-TOMOも体験させていただきましたが、1カゴの重さは約10㎏!
1~2箱ならまだしも、10箱20箱と投げ入れる作業は、かなりの力を要するため、うまく交代しながら作業が行われていました。 空になったバスケットは、そのまますぐ横の洗浄機へ。

取り除かれたブドウの梗が、除梗機からポンポン排出されます。外のトラックの荷台には、果梗が山盛り!


除梗し、果皮が軽く破れる程度に破砕されたブドウは、ボタンひとつでホースを通り、隣の発酵槽(タンク)へ。


この後、いよいよタンク内で発酵が始まり、ワインが造られます!

発酵

「発酵」とは、ブドウ果汁の糖分が、酵母の働きによって、アルコールと炭酸ガスに分解されること。
発酵タンクには様々な種類がありますが、白百合醸造では、主にステンレスタンクと木樽が使われています。

まずは、大型のステンレスタンク。こちらでは、契約農家さんからのマスカットベーリーAが発酵中。
タンクの上から覗いてもいいとのことで、やったー! ハシゴで上まで。高所恐怖症の人は上れない高さです(笑)

石川醸造部長にも一緒に上っていただき、中を覗いてみると・・・ 深い! そして、ブドウがたくさん!!
発酵開始から3日目のマスカットベーリーAです♪

覗く時に気をつけなければならないのは、深く覗き込みすぎないこと。
発酵が始まると、アルコールとともに二酸化炭素が発生するため、誤って吸ってしまうと、意識を失い、最悪の場合、タンクの中に落下する危険性があるからです。

赤ワインの発酵において、重要な工程が2つあります。

■マセラシオン■

ブドウの果汁、果皮、果肉、種子(時に果梗)を一定期間漬け込むことで、果皮からの赤い色素=アントシアニンやタンニンを抽出し、赤ワインらしい色調や味わいを与える重要な工程。「醸し」とも言います。

マセラシオンは、造るワインのタイプによって期間と手法が異なり、フレッシュでタンニン少なめなワインは数日間、濃いめの色調で超熟タイプのワインは、数週間に及ぶことも。
ロゼワインや、白ブドウで造るオレンジワインも、赤ワインと同様にマセラシオンを行います。

■攪拌■

アルコール発酵が活発になると、炭酸ガスの作用で、果皮や果肉、種子などの固形物がタンク上部の液面に浮き上がってきます。これを「果帽」といい、この表面を覆う果帽と、下の液体を攪拌する作業が必要になります。
攪拌することで、ワインをムラなく発酵させ、果皮からの色素やタンニンの抽出を促進、ワインをバクテリアやカビから守ることができます。

主な攪拌方法は、以下の2つ。
ピジャージュ:人の足や櫂棒、機械を使い、果帽を上から下に押し込んで攪拌。小型タンク向き
ルモンタージュ:ポンプを使い、タンクの下から汲み取った液体を上に戻し入れて攪拌。大型タンク向き

今回見せていただいたタンクは、1日に2回×1週間、ルモンタージュが行われるとのこと。

こちらは、醸造所内の発酵タンク。

木樽でも発酵が行われます。

樽の上に付けられているのは「発酵栓」。二酸化炭素が抜け出し、外からの異物や酸素が樽内に入らないようにする、一方通行の栓。発酵が活発に行われている時は、ブクブクしているのが見られます。

こちらは9月頭に収穫された、発酵から2週間ほどのシャルドネ。自社畑のブドウを使用した、樽発酵・樽熟成ワイン。
2023年は4樽、約1,000本のシャルドネが造られる予定です♪

圧搾

「圧搾」とは、果皮と種子から、果汁もしくはワインを搾り出すこと。
赤ワイン造りにおいては、マセラシオン期間終了後に、圧搾が行われます。

圧搾は、通常発酵タンクの下部から抜き取られる、ワインと果帽の重さのみで自然に流れ出る「フリーラン・ワイン」と、フリーラン後にプレス機で圧をかけて搾られる「プレス・ワイン」とがあり、フリーラン・ワインはより繊細な味わい、プレス・ワインはタイトで複雑な味わいとなります。

こちらが、圧搾機。

今回、甲州ブドウ(白ワイン)の圧搾を見ることができました!
前述の通り、白ワインは基本的に醸しを必要としないため、除梗・破砕後に圧搾し、ブドウ果汁のみを発酵させます。


圧搾されたブドウ果汁、もしくはワインは、そのままホースで醸造所内のタンクへ。
白ワインは発酵、赤ワインは熟成のプロセスへと進みます。

熟成

「熟成」とは、ワインをある一定期間、寝かせておくこと。
ワインの色やスタイルによって、熟成期間は異なり、ステンレスタンク、木樽、さらには瓶内にて熟成が行われます。ワインは、熟成させることで色調が安定し、香味の複雑味さや柔らかさ、旨みなどが増し、美味しくなるのです。

ステンレスタンク
オーク樽

一般的に、嫌気的醸造が好まれるフレッシュでアロマティックなワインは、ステンレスタンク、ゆっくりと時間をかけて酸素に触れながら熟成させ、尚且つ、オーク由来の香味や複雑味をワインに与える場合には、木樽が用いられます。

瓶詰め

熟成を終えたワインは、「澱引き」と「ろ過」が行われ、瓶詰めされます。

こちらが、ボトリングライン。ワインの充填、コルクの打栓、ボトル洗浄、キャップシールの装着まで、流れ作業で行うことができ、スタッフ5名で、1時間に平均1,600~1,700本もボトリングできるのだそう!

ボトルにワインを詰める充填機が2機種。

コルクを打栓する「コルカー」と、キャップシール装着用のヒーター。

取材翌日にボトリングが行われた、甲州の新酒。その様子を撮影していただきました♪
動画で見ると、ボトリングの流れがとてもよく分かりますね!

キャップシール

コルクを打栓した後、大半のワインに装着されているキャップシール。
ソムリエがソムリエナイフでスマートにカットする姿は、素敵ですよね♪

アルミだったり、プラスチックだったりするこのキャップシールは、コルクの乾燥防止や、瓶口の保護のために付けられますが、どのようにボトルにフィットさせるのか、ご存知ですか?

実はこのキャップシール、熱を加えることによって、瓶口にぴったりフィットするようになっているんです。
ボトルライン上のヒーターがそれですが、白百合醸造では手作業でも行います。

キャップシールをあらかじめ瓶口に乗せておいて、1本1本機械で装着していきます。


加熱するという意味では、ドライヤーでも密着させることができるそう!

ラベル貼り

ワインの産地やブドウ品種、ヴィンテージ、生産者名が記載されているラベル。「エチケット」とも呼ばれます。
店頭でワインを購入する際は、このラベルからどのようなワインなのかを読み解き、ラベルには各国記載しなければならない情報が法律で定められているため、ワインにとってはなくてはならない、とても重要なもの。

白百合醸造では、こちらの機械でラベルを貼ります。機械といっても、ボトルは手差しなので、ほぼ手作業!
こうして2万本に及ぶワインのラベルを、ワイナリーの皆様で手分けして貼っているのです。


簡単なようで、ボトルのラベルを貼る位置や、差し込み具合など、慣れないと難しいのだそう。
さらには、機械で読み取れないラベルもあるそうで、その場合は、なんと1本1本手貼り・・・

この日はちょうど弊社のPBワインのラベル貼りが行われましたが、裏ラベルが、まさにその手貼りが必要なラベル!!
というわけで、E-TOMO取材班も、手貼りのお手伝いをさせていただきました。

微妙に表裏サイズの異なるラベルを、まっすぐに、左右等間隔に貼る必要があります・・・
これをサクサク貼るのは、まさに職人技!!

熟練のワイナリーの皆様も苦戦されていて、様々なお手製ツール “ラベル貼りくん” が考案されていました♪

だんだん慣れてくると、感覚で貼れるようになり?!
時間が経つのも忘れ、真剣にラベル貼りすること、1時間強。276本の裏ラベルを貼り終えました!
実は、こういう地道な作業が好きな私たち。時間があれば、もっと貼ってもよかったくらい(笑)

こうしてラベルが貼られたワインは、箱詰めされ、いよいよ皆様のお手元に届くべく、出荷を待ちます。

こちらが完成した、今年2023年の新酒「山梨ヌーボー」。
弊社PBの甲州とマスカットベーリーAです♪(※おかげさまですべて完売)

飲食店の皆様のお手元に届いているワインの中には、私たちが1本1本心を込めてラベル貼りしたボトルが含まれているかもしれません! 万一ラベルが曲がっていても、E-TOMOが一生懸命手貼りしたんだな~ とお許しください(笑)

ブドウの成長から醸造までを見届けたワイン。

きっといつにもまして、美味しく、味わい深く感じられることでしょう。
生産者の皆様の日々の努力に感謝し、大切にいただきたいですね♡

取材後記

今回の取材は、計3日間。お天気に左右される収穫に、突然決まる仕込み。毎度ながら、自然を相手にする取材は、事前に予測するのが難しく、運が良ければどちらか見られるかも? という運任せの取材でしたが、そこは強運なE-TOMO取材班! 前日に収穫した自社畑のマスカットベーリーAを翌日に仕込むという、相当ラッキーな機会に恵まれました。

自分の手で収穫したブドウ(といってもほんの少し笑)が、ワインになるのを見られる “幸せ”。
皆様にもこの感動が伝わると嬉しいです♡

今回の定点観測で、傘かけ・収穫・仕込みと見せていただいた、自社畑のマスカットベーリーA。
こちらは今後、白百合醸造産の特別なワインとして販売が予定されており、まだ名前も決まっていないとのこと。
もしかすると、畑名の付いたワインになるのかも?? 数年の熟成を経て、市場に出る日をどうぞお楽しみに♪

最後に、毎回楽しみにしていたランチ。え? 〆もほうとうじゃないの? と思われた方!
「毎回ほうとうじゃ飽きるでしょ?」 と地元の人気店に連れて行っていただきました(笑)

山梨市の小さな酒造「養老酒造」が営む古民家カフェ「蔵元ごはん&カフェ 酒蔵 櫂」。
いただいたのは一番人気の「蔵元ごはんセット」。酒蔵の酒粕を使った粕漬けと粕汁は、身に染みる美味しさでした♪

大好きなワインについて取材させていただいた、あっという間の6ヵ月間。
お忙しい中、取材にご協力いただきました白百合醸造の内田社長、内田常務をはじめ、栽培部、醸造部、営業部、そしてワイナリーで働く皆々様、本当にありがとうございました!

白百合醸造
〒409-1315 山梨県甲州市勝沼町等々力878-2
TEL:0553-44-3131
WEB:https://shirayuriwine.com/


いかがでしたか?

これにて2023年の「E-TOMO定点観測レポート」は無事終了。
ご好評であれば、2024年も何かまた他の「お酒」を追いかけるかもしれません♪

それでは、また次回の「E-TOMO繁昌Navi」をお楽しみに~!

お酒のナビゲーター「E-TOMO FRIENDS」自己紹介

Tomoe
ワイン全般好きですが、シャンパーニュは浸かりたいくらい大好き! 最近は珍しい国のワインと品種に興味津々。聞いたことのない土着品種と出会うと、飲みたくて目がキラキラします☆

haruna
インスタで日々美味しいランチを探してます! 入社当時はワイン派でしたが、最近はもっぱら純米酒が好きになってしまいました♪

ユメコ
榎本のフードファイターと呼ばれるくらい食べることが大好きです! お肉料理が好きなので、さっぱりしたハイボールが大好きです!! 一年中飲んでます!

ルミ
すっきりとしたビールが大好きです!
特に趣味のテニスの後に飲む一口目は、まさに至福のひとときと言えます!